白いカラス

 人種問題を扱った重たくて高尚な話なんだが、物語作りがあまり上手じゃない。まずニコール・キッドマンのキャラクターがひどい。生まれはお嬢様だったが、突然両親が離婚。その後再婚した継父に犯られて、それを母親に言っても信じてもらえず家出。その後あちこち放浪し、現在は趣味がリスカの孤独な女性。こんなのもう手垢でベトベトだよ。
 著名な小説が元にある映画だが、小説は「私小説」なんていう心情吐露だけで成立できたりもするようなものであって、表現方法は映画と根を別とする。アンソニー・ホプキンスの妻が死ぬタイミング、あれはちょっとありえない。小説では、その死を見た誰かの心情を描写して進展させていくこともできるだろうが、映画でそれは無理だ。あのタイミングはリアリティを失うだけだ。

 鋭い部分もあって、アンソニー・ホプキンスの母親の別れ際のセリフとか実に重たかった。でもなー、ああいう感動は本で読んだほうがグッとくるのは間違いない。映像化に失敗してます。